経営労務トピック

〈春季交渉22〉ジョブ型雇用、論点に 物価2%上昇の足音 賃上げ2%超も課題(1/26 日経新聞より)

2022年の春季労使交渉が25日、事実上始まった。労働生産性の低迷が続くなか、働き方の見直しなどで付加価値を高める人的投資に関する議論が欠かせない。経営者側は働き手の職務内容をあらかじめ明確に規定するジョブ型雇用の導入などを進めたい考えだ。

ジョブ型雇用は会社の業務に最適な人材を配置する仕事主体の仕組みで専門性の高い職種などでは年齢に関係なく賃金を高くできる。人材獲得競争が激しくなるなかで導入の利点が増している。

日本生産性本部によると、20年の日本の1人あたりの労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国中28位で、前年の26位から後退した。労働生産性は人件費や営業利益などの付加価値額を従業員数で割って算出する。労働生産性の改善には人的投資を中心に付加価値を高める必要がある。

経団連は今年の交渉の指針となる経営労働政策特別委員会(経労委)報告で、人材の活躍のために日本型雇用システムの見直しを加速する必要性があると訴える。

連合の芳野会長はジョブ型雇用について「人への投資につながるか、職務の切り分けがきちんとできるのかなど慎重に見極める必要がある」とする。ある産別労組の幹部も「一概に否定はしないが、それぞれの企業にあった賃金制度であることが重要だ」と話し、人件費引き下げの動きにつながることを警戒する。

企業の賃上げ余力は高水準だ。法人企業統計によると、企業の現預金など手元資金は20年に250兆円を超える。日本総合研究所の山田久副理事長は「手元資金は過去最高水準だ。22年は2%超の賃上げができるかが注目される」と指摘する。

厚生労働省によると、21年の賃上げ率は1.86%と8年ぶりに2%を下回った。今年4月に携帯通信料の値下げ効果が一巡すると物価上昇率が2%に迫るとの予測がある。賃上げ率が2%を上回らなければ、「生活水準が低下する状況だ」(日本総研の山田氏)との声もある。

原材料高などの影響もあって、製造業を中心に先行きの見通しが悪化している。コロナ禍の最中での交渉となった21年のように、今回も変異型「オミクロン型」の感染拡大もあって交渉が難航する可能性もありそうだ。

 

これまで日本の労働組合は、製造業を中心に企業毎に団体交渉することで、一括・一律に賃金引き上げを要求してきました。ところが最近では、トヨタ労組のように賃上げ要求を職種・階級別に行うところも出てきました。従来、日本の企業は、労働生産が低いといわれてきました。しかし、ここに来て、企業も労働者も「一律、一括」を止める時期が到来しています。職種や能力によって差別化を図り、優秀な人材を国内はもとより海外からも招聘する必要があります。企業が優秀な人材を集めるために不可欠なのは、労働者の能力を客観的に正当に評価することです。能力を正当に評価されることで、労働者自身もさらに能力を向上させることが求められます。ジョブ型雇用にもまだまだ問題点はありますが、雇用者側にとっても、労働者側にとっても新たなチャンスを掴むきっかけとなる制度です。導入の検討が推奨できる制度といえます。

女性就労、もう一つのM字 労働時間差が映す男女不平等(1/16 日経新聞より)

働きやすさのジェンダー格差が根強く残っている。日本は仕事を持つ女性の比率が結婚・出産期に落ち込む「M字カーブ」がなだらかになる陰で、労働時間は二極化したままだ。女性はフルタイムと短時間の2つの山による「もう一つのM字カーブ」が浮き出る。性別によらず能力を発揮できる環境を整えなければ人口減少による成長力の低下に拍車がかかりかねない。

働く女性は増えている。総務省の労働力調査によると、就業者と職探し中の人を合わせた労働力人口の割合(労働参加率)は1990年に30~34歳で52%だった。2020年には78%に高まった。

性別による差がなくなったわけではない。労働時間の分布からは、なお残る社会のひずみが見て取れる。20年に男女ともに最も多い就業時間は週40~48時間だった。男性で46%、女性で32%を占める。次いで多いのは男性が49~59時間(14%)なのに対し、女性は15~29時間(26%)に1~14時間(14%)が続く。

週5日勤務で計算すると、男性は1日8時間以上働く人が就業者の7割を占める。女性は4割にとどまる。女性は非正規雇用が多いことが背景にある。

厚生労働省の調査で、女性が正社員以外で働く理由として最も多かった回答は「家庭の事情と両立しやすい」(41%)だった。10年に子供が生まれた世帯を追跡すると母親の常勤比率は出産を挟んで38%から25%に下がった。この数字は10年たっても3ポイントしか戻らなかった。逆にパート・アルバイトの比率は産前の19%から42%に拡大した。

「日本は正社員で働く負担があまりに重い」と日本女子大学の大沢真知子名誉教授は指摘する。日常的に残業があり、定時で帰れることは少ない。キャリアパスとして定着してきた国内外の転勤は家庭生活との両立が難しい。そのしわ寄せが女性に偏る。「家事、育児は女性が担う」という古い役割意識も残る。

国際労働機関(ILO)によると、週平均の労働時間の性差は主要7カ国(G7)で日本が最も大きく、10時間を超える。米国やフランスは5時間ほどだ。

慶応大学の山本勲教授らが10~15年の上場企業のデータを調べたところ、女性の管理職登用率が0.1ポイント上がると総資産利益率(ROA)が約0.5%、生産性が13%高まる関係がみられた。登用率が15%を上回ると企業業績が明確に向上する傾向もあった。「昇進の可能性が開かれることでモチベーション向上を通じ生産性が高まっているようだ」と分析する。

 

 

日本の少子高齢化の問題と女性の労働参加率は、密接な相関関係があります。以前からこの「M字型カーブ」については指摘されており、欧米のように台形に近づいてきているとはいえ、まだまだ問題があることが分かります。国もこれを放置しているわけではなく、働き方改革を促したり、育児休業法を改正したり、さまざまな助成金を準備したりすることで子育てのし易い職場環境づくりを促しています。

出産を支援する環境を整えたうえで、男性女性問わず子育てに参加できる職場を作ることは現代の経営者にとっては責務となっています。人口が減り続けることによる経済損失は計り知れないものがあります。日本の人口減少を他人事と思わずに自分の問題として真摯捉えることが求められます。

 

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日立、全社員ジョブ型に 社外にも必要スキル公表 高度人材、内外から募る (12/10 日経新聞より)

日立製作所は7月にも、事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を起用する「ジョブ型雇用を本体の全社員に広げる。管理職だけでなく一般社員も加え、新たに国内2万人が対象となる。必要とするスキルは社外にも公開し、デジタル技術など専門性の高い人材を広く募る。年功色の強い従来制度を脱し、変化への適応力を高める動きが日本の大手企業でも加速する。

ジョブ型は欧米では一般的な働き方で、職務記述書(ジョブディスクリプション)で職務ごとに必要なスキルを明記する。賃金も基本的には職務に応じて決まり、需要が大きく高度な職務ほど高くなる。

働き手にとってはスキルの向上が重要になる。事業環境の変化が速まるなか、企業が必要とする能力を身につければ転職もしやすくなる。

日本では職務を限定しない「メンバーシップ型雇用」が多い。幅広い仕事を経験する総合職型で、終身雇用と一体で運用されてきた。

日立の狙いは、必要な人材を社外から機動的に募ることと、個々の社員のレベルアップだ。年功制や順送り人事の壁を取り払い、管理職の約1万人とあわせ本体3万人が全面的にジョブ型にカジをきる。

人材の専門性が乏しく流動性が低いメンバーシップ型は日本の生産性が低迷する一因ともされている。

ジョブ型が多くの企業に広がれば個別企業の競争力の向上にとどまらず、労働市場全体の人材の適正配置を通じ、日本の生産性を底上げすることが期待できる。

 

日本では、加速する少子高齢化によって労働人口も減少していきます。そこで、今後も経済の維持、発展を継続するためには従来の働き方を見直す必要があります。近時、日本の企業の生産性を向上させることの重要性が主張されています。企業は漫然と行ってきた年更序列型賃金制度を根本から見直し、職務の内容や成果によって賃金を決定することが求められます。また、従業員にとっては、常に学び続け能力を向上させなければなりません。その実現には、企業、従業員のいずれにも意識改革が必須のことになります。

福岡県久留米市まつもと経営労務officeは、成長する企業のお手伝いをしていきます。

起業失敗でも失業手当 権利3年延長 安全網強化、挑戦促す (1/7 日経新聞より)

厚生労働省は会社を辞めて起業した場合、失業手当を受給する権利を最大3年間保留できるようにする。現在の受給可能期間は離職後1年間だけで、その間に起業すると全額を受け取れない課題があった。終身雇用の慣行に沿った制度を一部見直すことで安全網を広げ、多様な働き方を後押しする。経済を活性化するスタートアップが生まれやすい環境を整える。

労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会が近くまとめる雇用保険制度改正の報告書に盛り込む。厚労省は17日召集予定の通常国会に雇用保険法などの改正案を出す。

雇用保険に一定期間加入した人は、離職の翌日から1年間は求職活動中に失業手当を受け取れる権利がある。その間に起業したもののうまくいかなかった場合、受給可能期間が経過し、権利を失う例が多かった。

そこで1年間に加え、手当を受け取る権利を3年間保留できる特例を設ける。起業した会社の廃業後に就職活動に取り組むことを条件に日額上限で約8300円を支給する。権利を持ち越すだけで受給額などは変わらない。妊娠や出産などで求職活動ができない場合に同様の特例があり、それに沿った制度にする。

厚労省によると、海外ではドイツやスウェーデンなどで起業者やフリーランスらが任意で失業保険に加入できる例がある。日本の労働法制は原則、企業に雇われる労働者を前提に制度設計されている。

 

日本の開業率は、欧米諸国と比べるとかなり低い水準にあるといわれています。その理由の一つとして企業が失敗した際のセーフティネットが整備されていないことが挙げられます。中小企業白書によれば、開業率とGDPとの間には正の相関関係がみられ、開業率が高く、起業者がより多くなるほどGDPや経済に良い影響があることが分かっています。英国では、2010年から開業率の上昇が続いていますが、この背景には、英国政府による包括的な中小企業向け支援施策の充実があります。今回、手当を受け取る権利を3年間保留できる特例を設けることは、起業支援策の一つとして評価できます。起業を目指す人はこうした支援策を把握する必要があります。

 

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大卒外国人の採用、「高い日本語力」要求が壁 米欧は専門性重視(12/27 日経新聞より)

大卒程度の学歴で専門的な技術や知識を持つ外国人の採用に当たり、高い日本語での会話力を求める企業の姿勢が就労の壁になっている。求人の7割超が最高水準の日本語力を要求するのに対し、レベルを満たす求職者は4割弱にとどまることが26日、民間データの集計で分かった。国は「高度外国人材(総合・経済面きょうのことば)」として海外から研究者やエンジニアらの呼び込みを図るが、日本語での意思疎通を前提にした採用方針が活躍の機会を失わせている現状が浮かんだ。

米欧では会話力よりも専門性を重視した人材活用が定着している。IT(情報技術)分野などで人手不足が深刻になるなか、企業には成長の担い手を国外からも確保する姿勢が求められる。

経済産業省は、IT人材が2030年に最大79万人不足すると推計。パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は「IT分野こそ海外人材の活用が不可欠だ」という。しかし、日本学生支援機構の19年度調査で、日本で就職したのは留学生の36.9%と、国が目指す5割に届いていない。

日本は職務内容を限定しない「メンバーシップ型」雇用が中心で、必要なスキルの不明確さが日本語力を過度に重視する一因になっている。

 

国は、デジタル庁を設置し出遅れたIT戦略を練り直すことで、再び国際社会のトップランナーの地位を目指しています。そのためには、IT人材を育成すること、そして最新のIT人材を呼び込むことが不可欠です。外国人労働者の日本語能力はどの程度必要なのか。このことは「メンバーシップ型」といわれる一般的な日本の雇用形態(新卒一括採用型の雇用システム総合職として雇用し、転勤や異動、ジョブローテーションを繰りかえしながら、会社を支える人材として長期的に育成する形態)を見直す契機ともなります。必要なスキルを明確にし、不必要なハードルを下げていくことが優秀な人材を呼び込むキーポイントとなります。職務分析を行い、職務を明確にすることは、働き方改革と生産性向上にも繋がります。

 

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小売り、正月休業広がる 働き方改革 ライフ全店3日まで (12/17 日経新聞より)

小売り各社の間で年始に休業する動きが広がる。食品スーパー大手のライフコーポレーションは2022年1月の正月三が日に約290の全店で原則休業する。イトーヨーカ堂は3割の店で元日に休業する。小売業の現場は新型コロナウイルスの感染対策も加わり、人手不足感が強まっている。働き方改革を進めて生産性を改善する。

ライフは22年1月1~3日に東京都、大阪府、神奈川県などの全店(商業施設内の店舗など除く)で休業する。21年1月1~2日にほぼ全店を休業したところ1月の既存店売上高は前年同月比6%増と売り上げへの影響がなかったため、22年の年始は休業日を増やす。

イトーヨーカ堂は首都圏の小型店を中心に、全店の3割にあたる38店で元日の営業を休む。21年の元日の休業店舗は全体の4分の1だったが対象を広げる。

スーパーや百貨店などの元日営業は、00年の大規模小売店舗立地法の施行などを受けて広がった。だが人手不足が強まり各社の負担が増している。帝国データバンクの7月の調査によると、小売業で多い非正規社員が「不足している」と答えた企業の割合は約5割に上った。

小売業は労働生産性が低いのも課題となっている。経済産業省によると労働生産性(従業員1人当たりの付加価値額)は496万円と製造業の半分以下にとどまる。店舗の運営を効率化し、持続可能な事業モデルにすることが求められている。

 

四半世紀前までは、元旦・正月は皆お正月参りに出かける程度で、多くの家庭では親戚の家や自宅で静かに過ごすことが一般的でした。ところが最近は、「初売り」という名の下、静けさを吹き飛ばして慌しい正月が始まり、年の節目も感じにくくなりました。しかし、「新型コロナウイルス感染予防対策」や「働き方改革」などの影響もあって、改めて「静かなお正月」を見直す契機を迎えています。年末年始は、必要不可欠な最低限の業種、業態の人のみの交替出勤制を採ることで(これもAI化が進むことで容易になります)不必要な長時間労働を止めることが可能になります。このことによりかえって労働生産性を高めることが、これからの企業の成長の鍵となるのではないでしょうか。

トヨタ労組、賃上げ要求を職種・階級別に 「脱一律」鮮明 (12/2 日経新聞より)

トヨタ自動車労働組合は2022年の春季労使交渉で賃上げの要求方式を見直す。従来の全組合員平均で要求額を出す方式は廃止する。代わりに、職種や階級ごとに細分化して要求する執行部案をまとめた。トヨタの労使交渉は「脱一律」の流れが鮮明となる。大企業の多くの労組が取り入れる組合員平均による要求を止めることで賃上げ相場のけん引役だったトヨタの役割がさらに薄れるのは必至。他の企業の賃上げ交渉にも影響を与えそうだ。

変更理由についてトヨタ労組は「(個々の組合員の)水準をわかりやすくし、組合員が当事者意識を持ちやすくするため」(幹部)と説明した。

要求内容は22年2月に正式決定する。見直し案では賃上げのベースアップ(ベア)や定期昇給が含まれる額を職種や階級ごとに要求する。例えば「事務職の指導職クラス」「(生産現場が中心の)技能職の中堅クラス」といった職種・階級ごとに要求額を出す。具体的な額は今後決める。

21年春の交渉ではトヨタ労組は全組合員平均で9200円の賃上げを要求し、会社側から満額回答を得た。ベアの要求額は19年春から非開示。組合側は22年春もベアの要求額は示さない方針だ。

 

これまで日本の団体交渉は労働組合一丸となって行う一律要求が一般的でした。日本を代表する企業労組の今回の動きは、それを変えていく発端になると考えられます。当然に他の企業にも多大な影響を与えることになります。従来、賃金の決定方法は生涯一つの企業に勤めることを前提にしており、そのうえで年更序列型の一律給料表により定められてきました。人事評価制度に一部個別の能力を評価する方法を採り入れてきた企業も、既存のやり方が通用しなくなっているということに気付き始めています。経営者側からのアプローチではなく、労働者側から変わろうとしていることに意義があります。「当事者意識」という言葉が、今回の動きのキーワードです。大企業であれ、中小企業であれ、これから100年後も生き残るための体質改善のために労使ともに知恵を出し合うことは、重要なポイントです。

賃上げ大企業優遇、非正規含む給与総額の増額が条件に…政府・与党 読売新聞オンライン11/25(木) 20:38配信

政府・与党は2022年度税制改正で、賃上げした大企業が優遇を受けるには、新規、非正規を含む従業員の給与総額の増額を条件とする検討に入った。賃上げが幅広く浸透する効果を期待する。

今年4月に始まった現在の賃上げ優遇は、大企業の場合、新卒や中途採用など、新たに雇った従業員の給与を対象にしている。前年度比で2%以上増やした場合、支払った給与の15%分を法人税から差し引ける。

対象となる従業員の給与の合計が20億円ならば、3億円の減税になる計算だ。ただ、対象が限られているので、企業がため込んだ利益を従業員に還元する動機付けが不十分との見方も出ていた。すべての従業員を対象にすることで、賃金の底上げを図る。

岸田首相

中小企業の場合は、すでに従業員の給与総額を1・5%以上増やした場合に、増加分の15%分を差し引ける仕組みになっている。公明党は、控除率を30%に拡大したり、優遇対象に賞与を含めたりする案なども検討している。26日から本格化する自民、公明両党の税制調査会で議論する予定だ。

岸田首相は、持続的な賃金の引き上げを税制面で後押しし、消費の拡大につなげたい考えだ。首相が議長を務める「新しい資本主義実現会議」は11月上旬の提言で、1人あたりの賃金の引き上げや税制優遇の拡充、非正規社員の給与を増やす必要性に言及している。

育休30%めざしイクボスガイド NTN(10/26 労働新聞より)

ベアリング大手のNTN㈱(大阪府大阪市、鵜飼英一取締役 代表執行役 執行役社長 CEO)は、管理職向けに「イクボスハンドブック」を作成し、社内イントラネットで公開した。自社の育児休職(子が1歳6カ月まで可)や育児短時間勤務(小学校3年まで可)などの両立支援策のほか、職場でのマネジメントのあり方をケーススタディ形式で紹介している。

同社の2020年度の育休取得率は約20%で、平均取得日数は男性が128.5日、女性が361.8日だった。一方で単体従業員の男女比は、男性88%に対して女性12%と差が大きい。今後3年間で、育休取得率を30%程度まで高めることを目標に掲げている。

 

国は、育児介護休業法を改正し、男性の育休取得率をあげるために、産後8週間までに育休を取得した場合の補助金を準備するなど、様々な支援策を講じています。大企業は、独自に支援策を打ち出せますが、中小企業も、国の助成金を活用しながら従業員の働く環境を整えることで、魅力ある人材を確保することが可能となります。

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出社・在宅せめぎあい 企業・対面で営業 社員・感染が心配(10/13 日経新聞より)

オフィス出社と在宅勤務のどちらかを推進するかで企業と社員がせめぎ合っている。

緊急事態宣言の解除を契機に出社を増やす企業が相次ぐ一方、これまで同様の頻度で在宅勤務の継続を望む社員も多い。新たな働き方を生産性の改善につなげるには、企業も社員も工夫が求められる。

ユニ・チャームは、10月から就業の方針を「原則在宅勤務」から「原則週1回の出社」(工場勤務などを除く)に見直した。宣言解除を受けて社員の出社再開に転じる企業が増えている。

在宅勤務の原則撤廃や出社増に踏み切る企業に共通するのは、社員同士の交流減少に伴う生産性低下への懸念だ。

大手商社の首脳は「(営業など)対面でないとできない業務もある」と出社の意義を強調する。ただ、新型コロナウイルス収束しておらず、感染を懸念する社員もなおいる。在宅勤務に慣れた人も多く、生活の拠点を職場から離れた場所に移した人もいる。

英人材紹介大手ロバート・ウォルターズの日本の会社員に対する調査では、毎日のオフィス勤務に戻りたい人は5%にとどまった。出社が当たり前の時代は、もはや過去のものだ。

こうした意向をふまえ、宣言解除後も在宅勤務を奨励し続ける企業も多い。

ただ、出社と在宅のいずれの働き方にも問われるのは生産性だ。内閣官房などの資料によると、職場勤務に比べ、在宅勤務の生産性が低いと答えたのは企業が92%、労働者が82%だった。在宅勤務を生産性向上に繋げる試みは、なお途上だ。

 

コロナ禍を経験することで、テレワーク勤務が加速化し、同一労働同一賃金が社会に求められるようになりました。こうした背景の中で、以前から指摘されていた日本の生産性の低さがあぶり出され、ようやく生産性の効率化やその効果が直視されています。今後は、職務分析、職務評価を行うことで、どのような職務がテレワークに適しているのか、あるいは出社に適しているのかを分析する必要があります。そのうえで生産性の向上を図り、賃金の上昇を促し、付加価値をつけることで、社員のやりがいに結びつけることが労働市場の好循環に繋がります。

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公立小教員の残業代訴訟、請求棄却 「明日からの希望見えない」原告の男性、控訴の方針 ( 10/1 19:21配信弁護士ドットコムニュースより)

教員の時間外労働に残業代が支払われていないのは違法だとして、埼玉県内の市立小学校の男性教員(62)が、県に約242万円の未払い賃金の支払いを求めた訴訟で、さいたま地裁(石垣陽介裁判長)は10月1日、請求を棄却した。

判決後、都内で会見を開いた男性は「全く評価していません。今日の判決で、明日からの希望が見えてきません。労働基準法も守れない今の日本。僕は不満で不満で仕方ありません」と控訴する方針を示した。

代理人の若生直樹弁護士は「教員にも労働基準法32条が適用され、労働時間規制が及ぶということを明言した。これまでの裁判例や行政解釈とは一線を画す画期的な判決だ」と一定の評価をした。

 

  • 登校指導や朝会引率「労働時間に当たる」

これまで国は、教員の超勤4項目以外の勤務時間外の業務について「超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない」としてきた。

判決は、今回原告の男性が時間外におこなっていた登校指導や朝会への児童引率、職員会議などについて「労働時間に当たる」と判断。

一方、「校長が具体的に指揮命令したことをうかがわせる事情はなく、原告の自主的な判断でおこなっていた」「黙示的な指揮命令があったと評価することはできない」などとし、原告が主張した全ての業務を「労働時間に当たる」とは認定しなかった。

 

  • 今回の裁判がこれまでの裁判と違う点は?

埼玉大学教育学部の高橋哲准教授によると、これまで教員が起こしてきた残業代未払い訴訟は「労働基準法37条に基づき、法定労働時間を超えて働いたときや休日労働、深夜労働をしたときに手当を支給してください」と主張するものだった。

しかし、教員は教職調整額が支払われており、労基法37条が適用除外されているため、超勤手当が支給されるケースは例外的なものとして請求が棄却されてきた。

一方、今回の裁判では、労基法37条に基づく超勤手当が支給されるかの前に、まずは超勤4項目以外の業務が労基法32条に基づく労働時間に該当するのか、該当する場合は労基法32条違反に該当し対価を払う必要がある、などと主張していた。

 

  • 今回の判決のどこが画期的なのか?

判決は、この主張に則った形で、原告の超勤4項目以外の一部の時間外労働について「労働時間に該当する」と認定。ただ、国賠法上の違法性があるとまでは認めなかった。

ただ、高橋准教授は「32条に基づく労働時間の該当性が認められ、32条違反があれば損害賠償ができるということが判示され、閉ざされた門が開かれた」と判決の意義を語る。

「時間外労働の実態に関する証拠を重ねることで、労基法違反や、国賠法上の違法性が認められる可能性がある。中学高校で強制的な部活がある場合には、損害賠償が認められる可能性が出てくるだろう」(高橋准教授)

国は2020年、公立学校教員の勤務時間の上限について定めたガイドラインを、法的根拠のある「指針」に格上げした。高橋准教授はこの状況の変化にも触れ「勤務時間の上限を守ることが法的拘束力として校長に義務付けられている。今後、校長の過失や故意が認められる可能性があるのではないか」と話した。

 

  • 異例の付言「国は重く受け止めて」

また今回、裁判長が判決で「給特法は、もはや教育現場の実情に適合していないのではないか」などと付言したことについて、代理人の江夏大樹弁護士は「教員の訴訟に限らず、行政訴訟でこうした付言がなされることは極めて異例だ」と話した。

高橋准教授は、今回の付言の宛先が立法府や行政府であることに着目。「裁判所が財政措置や立法措置を求めることが異例だ。付言により強い要求がされており、国は重く受け止めてほしい。ボールは文科省に投げられている状況だ」と是正を求めた。

 

  • 原告の男性教員「教育現場を正しい方向に導いて」

弁護団らが判決の評価をする一方で、原告の男性教員は「今日の判決は、教員にとっては大変残念な結果です」と訴えた。

「1日3時間以上も無賃労働で残業させられていることについては、どう考えても納得がいきません。教員も一般の労働者と同じように1日8時間を超える労働時間を禁止している労働基準法32条を厳格に守らせて欲しいです。

1日8時間を超える労働を禁止していただければ、そこから教員の働き方改革が見えてきます。教員の時間外労働は教員が自主的に行なっているとされて、その裏では学校長が次から次へと仕事を命じている状況です。このような表と裏がある教育現場を正しい方向に導いて下さい」


学校現場が、ブラックな職場といわれるようになり、少子化も相俟って教職員を希望する若者が減少しているという記事を見かけるようになりました。

教員は、労働基準法第37条の適用除外となっています。そこで労働基準法32条に照らした救済を求めたというのが、今回の原告の立場です。

教員は、残業や持ち帰りの仕事が常態化しており、休日出勤も頻繁に行われている現状を鑑みれば、給特法で十分にカバーしきれているのかという疑念が生じます。

ここでいう給特法とは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」のことであり、給特法第3条により「教職調整額」が払われているために、「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」とされています。

原告は、控訴する方針ですが、教員に残業代や休日出勤を認めるというのであれば、まずは、給特法の見直しも検討する必要があります。もともと、学校5日制の問題も、週休2日制が社会に浸透し始めた時期に労働者の権利として教員が主張したことに起因します。「働き方改革」が時代の趨勢となっていることからしても、この問題について教員だけがブラックで過酷な労働環境に置かれていることの不条理を主張するのは、自然な流れといえます。

塩野義、希望者に週休3日制 来年度から(9/21 産経新聞 21:30配信より)

塩野義製薬が来年度から希望する社員が週休3日で働ける制度を導入することが21日、分かった。新入社員や管理職などを除く約7割の社員が対象となる。大学院での勉強や資格取得などを通じた社員の能力アップを促し、自社でのイノベーション(技術革新)につなげる狙い。

希望者を募り、来年4月から制度を開始する。副業も認める。給与は週休2日に比べて8割程度になる。入社3年未満や管理職は対象外で、介護や育児での利用も認める。

塩野義は創薬事業以外へのビジネスモデル拡大を目指し、人材育成を重視している。資格取得などで年間最大25万円を補助する既存制度と組み合わせ、社員の自己投資を促す。

週休3日制は政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」にも促進が盛り込まれている。みずほフィナンシャルグループが週休3日や4日を認める制度を導入するなど、動きが広がりつつある。

週休三日制は多面的な働き方のひとつのモデルと考えるべきです。週休三日制によって企業側は人件費の削減を図ることができる一方で、労働者側としても、休日は他の企業で仕事をすることで収入増やスキルアップを図ることが可能になるし、収入は減ったとしても、その分休日を自分自身の時間として有効に活用することができます。もちろんこれは週休三日制に適した業種・職種にいえることであって、業種・職種によっては週休二日制でかつ自社の業務にフルタイムで専念してもらうほうが望ましい場合もあります。

企業にとっても、労働者にとっても最適な働き方を選択するべきです。業務の内容や質に応じて、賃金とのバランスをとりながら、ある社員は週休2日制、ある社員は週休3日制と多面的な働き方を提供することが令和の時代の企業として、その維持発展に最も効果的な対応といえます。