経営労務トピック (2021.10)

育休30%めざしイクボスガイド NTN(10/26 労働新聞より)

ベアリング大手のNTN㈱(大阪府大阪市、鵜飼英一取締役 代表執行役 執行役社長 CEO)は、管理職向けに「イクボスハンドブック」を作成し、社内イントラネットで公開した。自社の育児休職(子が1歳6カ月まで可)や育児短時間勤務(小学校3年まで可)などの両立支援策のほか、職場でのマネジメントのあり方をケーススタディ形式で紹介している。

同社の2020年度の育休取得率は約20%で、平均取得日数は男性が128.5日、女性が361.8日だった。一方で単体従業員の男女比は、男性88%に対して女性12%と差が大きい。今後3年間で、育休取得率を30%程度まで高めることを目標に掲げている。

 

国は、育児介護休業法を改正し、男性の育休取得率をあげるために、産後8週間までに育休を取得した場合の補助金を準備するなど、様々な支援策を講じています。大企業は、独自に支援策を打ち出せますが、中小企業も、国の助成金を活用しながら従業員の働く環境を整えることで、魅力ある人材を確保することが可能となります。

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出社・在宅せめぎあい 企業・対面で営業 社員・感染が心配(10/13 日経新聞より)

オフィス出社と在宅勤務のどちらかを推進するかで企業と社員がせめぎ合っている。

緊急事態宣言の解除を契機に出社を増やす企業が相次ぐ一方、これまで同様の頻度で在宅勤務の継続を望む社員も多い。新たな働き方を生産性の改善につなげるには、企業も社員も工夫が求められる。

ユニ・チャームは、10月から就業の方針を「原則在宅勤務」から「原則週1回の出社」(工場勤務などを除く)に見直した。宣言解除を受けて社員の出社再開に転じる企業が増えている。

在宅勤務の原則撤廃や出社増に踏み切る企業に共通するのは、社員同士の交流減少に伴う生産性低下への懸念だ。

大手商社の首脳は「(営業など)対面でないとできない業務もある」と出社の意義を強調する。ただ、新型コロナウイルス収束しておらず、感染を懸念する社員もなおいる。在宅勤務に慣れた人も多く、生活の拠点を職場から離れた場所に移した人もいる。

英人材紹介大手ロバート・ウォルターズの日本の会社員に対する調査では、毎日のオフィス勤務に戻りたい人は5%にとどまった。出社が当たり前の時代は、もはや過去のものだ。

こうした意向をふまえ、宣言解除後も在宅勤務を奨励し続ける企業も多い。

ただ、出社と在宅のいずれの働き方にも問われるのは生産性だ。内閣官房などの資料によると、職場勤務に比べ、在宅勤務の生産性が低いと答えたのは企業が92%、労働者が82%だった。在宅勤務を生産性向上に繋げる試みは、なお途上だ。

 

コロナ禍を経験することで、テレワーク勤務が加速化し、同一労働同一賃金が社会に求められるようになりました。こうした背景の中で、以前から指摘されていた日本の生産性の低さがあぶり出され、ようやく生産性の効率化やその効果が直視されています。今後は、職務分析、職務評価を行うことで、どのような職務がテレワークに適しているのか、あるいは出社に適しているのかを分析する必要があります。そのうえで生産性の向上を図り、賃金の上昇を促し、付加価値をつけることで、社員のやりがいに結びつけることが労働市場の好循環に繋がります。

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公立小教員の残業代訴訟、請求棄却 「明日からの希望見えない」原告の男性、控訴の方針 ( 10/1 19:21配信弁護士ドットコムニュースより)

教員の時間外労働に残業代が支払われていないのは違法だとして、埼玉県内の市立小学校の男性教員(62)が、県に約242万円の未払い賃金の支払いを求めた訴訟で、さいたま地裁(石垣陽介裁判長)は10月1日、請求を棄却した。

判決後、都内で会見を開いた男性は「全く評価していません。今日の判決で、明日からの希望が見えてきません。労働基準法も守れない今の日本。僕は不満で不満で仕方ありません」と控訴する方針を示した。

代理人の若生直樹弁護士は「教員にも労働基準法32条が適用され、労働時間規制が及ぶということを明言した。これまでの裁判例や行政解釈とは一線を画す画期的な判決だ」と一定の評価をした。

 

  • 登校指導や朝会引率「労働時間に当たる」

これまで国は、教員の超勤4項目以外の勤務時間外の業務について「超勤4項目の変更をしない限り、業務内容の内容にかかわらず、教員の自発的行為として整理せざるをえない」としてきた。

判決は、今回原告の男性が時間外におこなっていた登校指導や朝会への児童引率、職員会議などについて「労働時間に当たる」と判断。

一方、「校長が具体的に指揮命令したことをうかがわせる事情はなく、原告の自主的な判断でおこなっていた」「黙示的な指揮命令があったと評価することはできない」などとし、原告が主張した全ての業務を「労働時間に当たる」とは認定しなかった。

 

  • 今回の裁判がこれまでの裁判と違う点は?

埼玉大学教育学部の高橋哲准教授によると、これまで教員が起こしてきた残業代未払い訴訟は「労働基準法37条に基づき、法定労働時間を超えて働いたときや休日労働、深夜労働をしたときに手当を支給してください」と主張するものだった。

しかし、教員は教職調整額が支払われており、労基法37条が適用除外されているため、超勤手当が支給されるケースは例外的なものとして請求が棄却されてきた。

一方、今回の裁判では、労基法37条に基づく超勤手当が支給されるかの前に、まずは超勤4項目以外の業務が労基法32条に基づく労働時間に該当するのか、該当する場合は労基法32条違反に該当し対価を払う必要がある、などと主張していた。

 

  • 今回の判決のどこが画期的なのか?

判決は、この主張に則った形で、原告の超勤4項目以外の一部の時間外労働について「労働時間に該当する」と認定。ただ、国賠法上の違法性があるとまでは認めなかった。

ただ、高橋准教授は「32条に基づく労働時間の該当性が認められ、32条違反があれば損害賠償ができるということが判示され、閉ざされた門が開かれた」と判決の意義を語る。

「時間外労働の実態に関する証拠を重ねることで、労基法違反や、国賠法上の違法性が認められる可能性がある。中学高校で強制的な部活がある場合には、損害賠償が認められる可能性が出てくるだろう」(高橋准教授)

国は2020年、公立学校教員の勤務時間の上限について定めたガイドラインを、法的根拠のある「指針」に格上げした。高橋准教授はこの状況の変化にも触れ「勤務時間の上限を守ることが法的拘束力として校長に義務付けられている。今後、校長の過失や故意が認められる可能性があるのではないか」と話した。

 

  • 異例の付言「国は重く受け止めて」

また今回、裁判長が判決で「給特法は、もはや教育現場の実情に適合していないのではないか」などと付言したことについて、代理人の江夏大樹弁護士は「教員の訴訟に限らず、行政訴訟でこうした付言がなされることは極めて異例だ」と話した。

高橋准教授は、今回の付言の宛先が立法府や行政府であることに着目。「裁判所が財政措置や立法措置を求めることが異例だ。付言により強い要求がされており、国は重く受け止めてほしい。ボールは文科省に投げられている状況だ」と是正を求めた。

 

  • 原告の男性教員「教育現場を正しい方向に導いて」

弁護団らが判決の評価をする一方で、原告の男性教員は「今日の判決は、教員にとっては大変残念な結果です」と訴えた。

「1日3時間以上も無賃労働で残業させられていることについては、どう考えても納得がいきません。教員も一般の労働者と同じように1日8時間を超える労働時間を禁止している労働基準法32条を厳格に守らせて欲しいです。

1日8時間を超える労働を禁止していただければ、そこから教員の働き方改革が見えてきます。教員の時間外労働は教員が自主的に行なっているとされて、その裏では学校長が次から次へと仕事を命じている状況です。このような表と裏がある教育現場を正しい方向に導いて下さい」


学校現場が、ブラックな職場といわれるようになり、少子化も相俟って教職員を希望する若者が減少しているという記事を見かけるようになりました。

教員は、労働基準法第37条の適用除外となっています。そこで労働基準法32条に照らした救済を求めたというのが、今回の原告の立場です。

教員は、残業や持ち帰りの仕事が常態化しており、休日出勤も頻繁に行われている現状を鑑みれば、給特法で十分にカバーしきれているのかという疑念が生じます。

ここでいう給特法とは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」のことであり、給特法第3条により「教職調整額」が払われているために、「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」とされています。

原告は、控訴する方針ですが、教員に残業代や休日出勤を認めるというのであれば、まずは、給特法の見直しも検討する必要があります。もともと、学校5日制の問題も、週休2日制が社会に浸透し始めた時期に労働者の権利として教員が主張したことに起因します。「働き方改革」が時代の趨勢となっていることからしても、この問題について教員だけがブラックで過酷な労働環境に置かれていることの不条理を主張するのは、自然な流れといえます。