経営労務トピック (2021.7)

雇用保険料22年度にも引き上げへ 雇調金増、財源が不足 (7/28 日経新聞より)

厚生労働省は、雇用保険の保険料率を引き上げる検討に入ります。新型コロナウイルス感染拡大で雇用調整助成金の給付が増え、財源が逼迫しているためです。

雇用調整助成金は、企業が従業員に払う休業手当の費用を助成する制度です。仕事が減っても働き手を解雇せず、雇用を維持してもらう狙いがあります。

国は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例措置として2020年から助成内容を拡大した結果、新型コロナの影響による支給決定額は20年3月から21年7月23日時点の累計で4兆円を超えました。労働経済白書によると、雇調金の特例などの効果で20年4月から10月の完全失業率を2.6ポイント抑えられたといいます。

コロナ下で雇調金は雇用維持に一定の効果が出ていますが、休業手当を補う内容のため、人手が余る業界に働き手がとどまりかねません。長引けば労働市場の調整機能がゆがむ面もあります。人手が必要な成長分野への移動が起きるよう学び直しの機会を増やす必要があります。

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最低賃金3%引き上げ、全国平均930円、最大28円増  政府時給引き上げに助成金(7/15 日経新聞より)

中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすると決めました。28円の引き上げ額は過去最大で、上げ幅は約3%でした。実現すれば全都道府県で初めて800円を超えます。

最低賃金は企業が労働者に支払わないといけない最低限の時給で、違反した企業には罰則もあります。現在の全国平均は902円。毎年、国の審議会が全都道府県をA~Dランクに分けて引き上げ目安を示し、これを基に各地域の審議会が実際の金額を決めています。10月ごろに新たな最低賃金が適用されます。

今回、小委員会は全てのランクを28円としランクごとの差を設けませんでした。

第2次安倍政権は年3%の引き上げ目標を掲げ、政権の意向に沿って16~19年度は約3%ずつ大幅に引き上げました。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮して国の審議会が11年ぶりに引き上げ目安を示せませんでした。結果的に各都道府県の引き上げは、全国平均で0.1%(1円)増にとどまりました。今年度はワクチン接種などが進み、新型コロナの影響をどう捉えるかで労使の意見が対立していました。

政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最低賃金について「感染症拡大前に引き上げてきた実績を踏まえ、より早期に全国平均1000円をめざす」と記しました。急激な上昇に耐えられるよう、中小企業への政府の支援策を求める声もあります。

政府は最低賃金の3.0%引き上げに向け、企業の負担軽減策を講じます。雇用調整助成金など複数の補助金について時給を上げる中小企業が受け取れるよう給付要件を見直します。

政府は、一定以上時給を上げる中小企業を対象に、10月から3ヶ月間、助成金を出します。コロナの影響が大きい中小企業で最低賃金引き上げの負担が過大にならないようにします。

また、業態転換を進める企業を支援する事業再構築補助金でも給与の引き上げ企業に配慮します。売上高が大きく落ち込んでいることを条件に、給与を上げる中小企業対象に特別枠を設けて補助率を高めます。

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障害年金、うつ・がんも対象 申請漏れ多く時効は5年(7/12 日経電子版より)

ケガや病気で生活に支障がある人がもらえるのが障害年金です。受給者は拡大の一途ですが、制度の理解不足から申請漏れがかなり多いとされています。職場の人間関係からうつ病となり退職した者が、申請の結果、年に120万円を受給できるようになったが、障害年金の時効は5年であるため、遡って5年分はもらえるものの、それ以前の分は時効消滅してしまうということもあります。

障害年金は目や手足の障害だけが対象だと思う人が多いのですが、実際はうつ病など精神疾患、糖尿病といった内臓疾患やがんなど、傷病名にかかわらず、生活や仕事に支障がある状態になれば請求可能です。障害年金は国民年金または厚生年金の被保険者(被保険者だった一部の人などを含む)が障害の状態に該当し、原則保険料の納付要件を満たせば受給できます。年金というと高齢者のイメージですが基本的に20歳以上なら受給対象となります。

障害厚生年金は加入期間や収入で変わり、一定条件で配偶者の加算が付きます。非課税なので大きな助けとなります。しかし会社員時代に傷病が始まったのに診察を受けずに退社し障害基礎年金しかもらえない人も多いのが現状です。

 

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キヤノン、工場従業員にDX教育 成長職種へ配置転換 (7/7 日経新聞より)

事業構造改革に向けて従業員にデジタル関連などの再教育をする企業が増えています。キヤノンは工場従業員を含む1500人にクラウドや人工知能(AI)の研修を実施します。医療関連への配置転換などを通じ成長につなげることを目指しています。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)はグループ従業員5万人にデジタル教育を進めています。

今、銀行は店舗を拠点にした対面サービスの見直しを迫られています。送金や決済はスマートフォンでも可能になり、企業向け融資ではクラウドファンディングなどの新手法も広がっているためです。既存のノウハウだけでは競争力を維持できない状況です。

電機や金融に限らず、AIやデジタル領域に代表される成長分野は慢性的な人材不足に陥っていますが、デジタル技術の進化に対応した「リスキリング(学び直し)」に世界各国が取り組んでいます。欧米では転職やキャリアアップのための再教育を政府が積極的に後押していますが、日本はまだ遅れているため、企業自身が主体的に内部での再教育に踏み切っています。しかし、中堅・中小企業にできることは限られます。

今後、学び直しを支援する公的な仕組みの拡充を睨みながら従業員の資質向上のための体制を整えることが必要になります。

雇用流動化、若者がけん引 3年内離職率が10年で最高 (7/4 日経新聞より)

転職する若者が増えています。新型コロナウイルス禍で雇用環境が厳しい中、成長性が高い分野をめざす動きが活発になっています。

入社後に短期で転職すれば十分経験を積めない懸念があり、会社も育て始めた人材の流出は損失が大きいでしょう。それでも社会全体で生産性を高めるには成長分野への人材シフトが欠かせません。若い世代の動きが他の先進国に比べて低い日本の流動性を高める可能性があります。

構造的な人手不足を背景に「売り手市場」として拡大していた転職市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けていったん落ち込みましたが、現在回復途上にあります。有為な人材を永く自社に留めるためにも、労働環境、福利厚生等の充実、適切な人事考課が不可欠になります。

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