三菱ケミカルホールディングス(HD)は出社不要の「完全テレワーク制度」を期限を区切らずに始めた。本社とその周辺で働くオフィス従業員を中心に、全体の1割に当たる4200人が対象となる。IT(情報技術)企業では導入例があるが、国内製造業では珍しい。働きやすい環境を整えてデジタル関連などの多様な人材を呼び込む。
本社とその周辺で働き、主に事務や営業、システム開発などに携わる従業員が対象。義務ではなく、希望すれば働きやすくなるよう働き方の選択肢を広げる施策となる。安全運転のため24時間3交代制を採っている工場などには適用しない。
従来は社内規定で「週1回以上は出社する」と明記していた。新型コロナウイルスの流行が拡大した2020年春に特例で完全テレワークを認めた。制度の対象となる都内拠点では現在、従業員の7割程度が在宅勤務もしくはサテライトオフィスで遠隔勤務をしている。テレワークが浸透したため今年4月から恒久的な運用に切り替えた。
介護や育児中の社員が働きやすくなる一方で、完全テレワークは社内でのコミュニケーションが大幅に減る恐れがある。三菱ケミカルHDは上司と部下の面談を密にするほか、オンライン方式の非公式な会合を推奨するなどして課題に対応していきたい考えだ。
新型コロナウイルス災厄を経験したことで、テレワークが浸透しました。これによって、出社することが当たり前だった働き方が見直され始めています。テレワークを認めることによって様々な波及効果が生まれます。
具体例として、従業員の通勤の負担を減らし効率的に業務を行えることや、育児や介護中の従業員が働きやすくなることなどが挙げられます。テレワークを導入し、多様な働き方を認めることで、人手不足を嘆いている企業にも対応策の可能性が出てきます。ただし、業種や業態によっては、テレワークが馴染まない企業や部署もありますし、テレワークを採用するのであればその労務管理の問題もクリアーしなければなりません。従業員間のコミュニケーションの問題や、従業員教育の問題など、テレワーク導入前に十分な議論や準備をすることも不可欠です。また、就業規則の中にテレワークに関する規定を盛り込む必要もあります。今後コロナが完全に終息したとしてもテレワークのメリットを享受すれば、コロナ禍以前の働き方に完全に戻すことはできなくなります。