経営労務トピック (2022.6)

大成建設、パパも全員育休 男性8割職場の「壁」壊し術 しごと進化論 (5/15 日経新聞より)

約8600人いる社員の8割を男性が占める大成建設が、育児休業取得率100%を3年連続で達成している。丸井グループも4年連続100%の記録を更新中だ。育休を取りたいというパパたちは確実に増えているが、その前に3つの高い壁が立ちはだかる。「上司や職場の無理解」「収入の減少」「復帰後のキャリア不安」だ。両社はこの壁をいかに壊したのか。

「多数派こそ育児を知らねば」

建設業界は20年間で就業者数が150万人も減り、担い手不足が深刻だ。育児に理解のない職場では、貴重な女性社員をつなぎ留められない。「多数派の男性こそ、育児とは何たるか身をもって知る必要がある」(人事部の塩入徹弥専任部長)。2016年に取得率100%の目標を掲げた。

 

同社では子どもが満2歳を迎えるまで、父親に取得権が与えられる。17~19年度に子どもが生まれた男性社員は全員が取得済み。19年度生まれの場合、平均取得日数は9.7日だ。今や社内の男性の6人に1人が経験者で、子育て中の女性社員からも「緊急時の早退などの相談がしやすくなった」との声があがる。

国は22年10月に出産直後に取得を促す「男性版産休」を創設し、23年4月には従業員1千人超の事業主に取得率を開示することも義務付ける。制度の充実は、取得率が低迷していることの裏返しでもある。厚生労働省によると、20年度時点の全国の男性の育休取得率は12.7%どまりだ。

 

大成や丸井は社内アンケートなどを通じて取得への「壁」を把握し、一つ一つ突き崩してきた。大成の現場では、以前から図面や施工過程のデータを随時上司や同僚と共有し「あす急に休むことになっても交代できる」(社員)状況にあった。しかし「上司や職場の無理解」という第1の壁が高かった。

 

これだけ経験者が増えている大成でも、部下に切り出されて戸惑う管理職はゼロではない。塩入専任部長は「上司こそ業務の先の見通しが本人よりも見えているはずで、調整に不可欠」と話す。

 

「イクボスの皆さんはぜひ取得しやすい雰囲気をつくってください」。初期の旗振り役、村田誉之前社長は全社に断続的にメッセージを発信。トップが発破をかけ、役員、部長、課長と上から下へ意識変革を迫った。

「ダメな部局、一目瞭然」

30近い支店や事業所のトップを務める役員クラスと管理職に、取得率を四半期ごとに一斉送信する。全部門の一覧表なので、ダメな部局は社内中に知られてしまう。未取得の社員がいる部局の幹部には人事部が働きかけ、取得期限が近づくほど連絡の頻度を上げてプレッシャーをかける。

 

その分、上司の権限を大きくした。従来は1カ月前までに人事への申請が必要だったが、上司さえ了承すれば取得直前の申請でもOKとした。「今なら取れる」という機を逃さずにすむ。

 

第2の壁が「収入の減少」だ。原則満1歳、事情に応じて満2歳までは給与の50~67%に相当する育児休業給付金を雇用保険から受け取れるが、夫婦ともに休めば家計不安は大きい。大成では5日間まで育休を有給扱いにできる制度を、今秋にも大幅に拡充する。男性版産休を使う場合は1カ月分を有給扱いにできる方向で検討している。

 

第3の壁である「復帰後のキャリア不安」を壊しにかかっているのが丸井グループだ。

「2年以内に昇進したい。でも産後の妻を助けるにはここしかない」。押川剛一郎さんは18年、当時は前例も少なかった半年間の育休を取得した。復帰から1年半後、男性としては半年育休の経験者で初めて管理職へ昇進。今はグループ会社の部長として活躍する。

 

昇進試験の受験資格は直近1年分の評価をもとに与えられる。育休を挟んだ場合、公平になるよう取得期間を除いて前後計1年分の評価を使う。押川さんの事例を周知し「昇進で不利になるのでは」という不安を払拭。長期取得者を増やした。

100%はゴールじゃない 丸井が目指す「早く長く」

男性育休の取得率100%を目指す機運は鮮明だ。ワーク・ライフバランス(東京・港)は「100%宣言企業100社」を公表している。現在は137社が宣言し、うち33社が一度は100%を達成している。

 

ただ、高取得率はゴールではない。丸井グループの25年度の目標には取得率100%の維持に加え、「育休を1カ月以上取った男性社員の割合20%」や「家庭における男性の家事・育児負担比率35%」が並ぶ。負担比率は21年度にクリアした。

社内で子どものいる女性250人に尋ねたところ、計52%が1週間から1カ月間ほど育休を取得してほしいと回答。時期は54%が産後2カ月以内を希望した。「『早く、長く』がモットー。夫婦間で育児スキルのギャップができず、妻の復帰後もスムーズに協力体制が立ち上がる」(人事部)。国が男性版産休を創設するのも「早く長く」を重要視するからだ。

 

大成は心理学に詳しい大学教授を招き「成長における父性の大切さ」を解説する研修も行った。「代わりが利かないのは業務ではなく父親」と塩入専任部長。短い育休だけで満足しないパパを育てる。

 

                                       

記事の中にもあるように、政府は、今年の10月に出産直後に取得を促す「男性版産休」を創設し、23年4月には従業員1千人超の事業主に「男性版産休」取得率の開示義務付けを予定しています。

厚生労働省は今年度、両立支援等助成金を改訂し、中小企業も育児休業を取得しやすい環境作りをサポートします。加えて4月から不妊治療の保険適用も認められ、10月からは幼児教育、保育の無償化がスタートすることになります。このように政府が、出生率の増加のために積極的に政策を打ち出していることが窺えます。

先進国では経済発展に伴い、出生率が低下していますが、欧米諸国のうち出生率が回復傾向にある国では、経済的支援から保育や育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきました。こうした家族政策と出生率との相関関係のモデルを踏まえて、わが国でも近年、「両立支援」のために力を入れています。その一方で、わが国は欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じた家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されています。家族関係社会支出の対GDP比をみると、わが国は、1.35%(2011年度)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べると、その4割程度にすぎません。

出生率増加のためには、過去に廃止された子供に対する扶養控除を再設定するなど税制にも踏み込み、省庁の垣根を越えて施策を準備することでさらに経済的支援を拡充していくことが重要です。

【出典:内閣府資料 国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」(2011年度)】

 

 

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出生率6年連続低下 昨年1.30、最低に迫る 少子化対策、空回り 出生数最少(6/4 日経新聞より)

厚生労働省は3日、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率(総合2面きょうのことば)が2021年は1.30だったと発表した。6年連続で低下し、出生数も過去最少だ。新型コロナウイルス禍後に出生数を回復させた欧米と比べて対策が見劣りする上、既存制度が十分使われず、支援が空回りしている。このままでは人口減少の加速に歯止めがかからない。

出生率は05年の1.26が過去最低。21年の1.30は前年より0.03ポイント低下し、過去4番目に低い。1.5未満が「超少子化」水準で、1.3未満はさらに深刻な状態とされる。出生数は81万1604人と前年比2万9231人減で6年連続で過去最少だった。厚労省は15~49歳の女性人口の減少と20代の出生率低下を理由に挙げる。

結婚の減少も拍車をかけた。21年は50万1116組と戦後最少でコロナ禍前の19年比で10万組近く減った。婚姻数の増減は出生数に直結する。コロナ下の行動制限の影響で出会いが減少したことが影響したとみられる。

 

コロナ下で出生数が減る現象は各国共通だが、欧米の一部は回復に向かっている。米国は21年に約366万人出生し7年ぶりに増えた。出生率も1.66と前年の1.64から上昇した。フランスも21年の出生率は1.83で、20年の1.82から上がり、ドイツも21年の出生数は増加する見通しだ

手厚い少子化対策が素早い回復を促した。野村総合研究所のまとめでは、フランスや英国などは不妊治療の費用を全額助成する。日本は長く不妊治療への支援が限定的だった。22年4月から不妊治療への保険適用が始まったが、仕事との両立に悩むカップルは多い。治療しやすい環境が伴わなければ、保険適用の効果は限定的になる。

中京大の松田茂樹教授は「若い世代の雇用対策と経済支援が必要」と話す。結婚に至らない理由に経済的な不安定さがあるといい、「正規雇用でも賃金が不十分な人が多い。若い世代のキャリア形成支援が結婚、出産に結びつく」と指摘する。

 

出生から死亡を引いた自然減は62万8205人と過去最大になった。国立社会保障・人口問題研究所の予想を上回る速さで進む出生減が主因だ。想定以上の少子高齢化が進めば日本の社会基盤が揺らぎ、世界の経済成長に取り残されていく。

 

                                           

日本の少子高齢化については従来より問題視されてきましたが、効果的な政策が打てていないのが現状です。国の産業が発展し、国民が豊かになり、先進国になると少子高齢化が進むのは必然的であり先進国に共通する悩みとなっています。なかでも日本の場合には、医療技術の発展や社会保障の充実により突出した高齢化社会を迎えています。

本文でも触れられているように日本の合計特殊出生率は、先進国の中でも低い状況にあります。その対策として、国は、育児休業法を改正し今年の4月から中小企業も従業員が安心して子育てのしやすい環境を整える事を義務化しました。合わせて助成金を支給することで企業の負担を軽減しています。

しかし、これだけで本当に若者が結婚して子供を産みたいと思うのでしょうか。

少子化は、労働力人口の低下をもたらし、経済力の低下を招きます。本気で人口増加を目指すのであれば、1組の男女から2人以上の子供を産み育てることが求められます。そのためには若い男女が結婚して子供を産みたくなる雇用環境を整えることが重要です。この国では女性がキャリアを積むことにまだまだ抵抗があります。昔からある性別の役割分担の意識改革も必要になります。

この問題は、省庁の枠を超えて国を挙げて取り組む問題です。

子供が複数いる家庭への税金の優遇や、保育所や教育支援施設といった子供を育てるための労働環境の整備、経済力に関わらず優秀な人材を育成するための教育機関の設置など、将来の日本を背負う若者を社会全体で支える制度作りが不可欠です。

 

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