スウェーデンでは子が8歳になるまで、両親が合計480日の有給育児休暇を取得できる。オリビエさんが約6割、妻が残りを取得したという。
社会全体で負担
スウェーデンが社会保障先進国になったのは、90年前の経験がある。19世紀以降に「多産多死」から「少産少死」への転換が進み、スウェーデンの出生率は大恐慌のころ、当時の世界最低水準ともいわれた1.7程度まで落ち込んだ。国の針路を変えたのがノーベル賞経済学者グンナー・ミュルダールだ。
当時の世論は二分していた。「女性の自由を制限してでも人口増につなげるべきだ」「人口減は人々の生活水準を高めるので歓迎だ」。ミュルダールはどちらの主張も批判し、出生減を「個人の責任ではなく社会構造の問題」と喝破した。
人口減に警鐘を鳴らした1934年の妻との共著「人口問題の危機」を機に政府は人口問題の委員会を立ち上げ、ミュルダールも参加した。38年までに17の報告書をつくり、女性や子育て世帯の支援法が相次ぎ成立した。これがスウェーデンモデルと呼ばれる社会保障制度の基礎となった。
74年には世界で初めて男性も参加できる育休中の所得補償「両親保険」が誕生した。妊娠手当、子ども手当、就学手当などの支援は手厚く、大学までの授業料や出産費も無料だ。育児給付金は育休前の収入の原則8割弱。税負担は重いが「十分な恩恵を得られる」(オリビエさん)。
女性の就業率は高く、現政権の閣僚も半数が女性だ。家族支援のための社会支出は国内総生産(GDP)比で3.4%と、米国(0.6%)や日本(1.7%)をはるかにしのぐ。
「90年の大計」をもってしても少子化に抗するのは簡単ではない。それでも少子化対策は未来への投資だ。「ミュルダールは特に若い層向けの福祉政策を人的資本の投資ととらえ、生産性を高める経済政策を兼ねると考えた。その理念は今も生きている」(名古屋市立大の藤田菜々子教授)
スウェーデンと並び少子化対策の成功例とされるフランス。100年以上の悲願だったドイツとの人口再逆転を、今世紀中に達成する見通しだ。
仏は19世紀前半に独に人口逆転を許し、19世紀後半の普仏戦争敗北は「人口で負けたからだ」との危機感が染みついた。仏は「仕事と家庭の両立」を軸に社会制度を大きく見直した。ドイツは「子供の面倒を見るのは母親だ」という保守的な家族観が一部に残る。
国連が7月に改定した人口推計で、世界人口の年間増加率が統計を遡れる1950年以降で初めて1%を割った。人口減は世界共通の課題だ。
(一部抜粋)
人口問題、少子化対策については、スウェーデンもフランスも一朝一夕で成功してきたのではありません。出生減は、「個人の責任ではなく、社会構造の問題」という言葉を重く捉え日本も本腰を入れて対策するべきです。
それにもかかわらず、少子化対策や、若者への政策を重視すると高齢者から嫌われるのではないかと選挙の結果を恐れ、それを声高に叫ぶのを躊躇する政治家が少なくないようです。少子化対策は成果が直ぐにでる政策ではないため、スウェーデンやフランスの例のように長期的な観点から腰を据えて行う必要があります。
社会保障問題を政争の具にするのではなく、政党を超えて議論するべきです。
高齢者も日本の社会保障制度が、現在の若者によって支えられていることを自覚する必要があります。
スウェーデンやフランスの成功例も参考にするべきですが、そのまま取り入れるかどうかは、日本のこれまでの歴史的背景や国民性も考慮して検討しなければなりません。
日本の育児環境は、お金が掛かりすぎることから子供を産むのを躊躇する家庭もあるでしょう。まずは、これまで以上に出産手当や育児休業手当を手厚くし、育児休業制度を充実させることで育児環境を整備することが求められます。教育制度については、どこまで無償化を進めるか議論する必要があります。高等教育に関しては、一律に免除するのではなく、優秀な人材に対する経済的なハンディを排除する制度設計が重要です。
両立支援等助成金のご相談、育児介護休業法改正に伴う規定の見直しは、福岡県久留米市まつもと経営労務officeまでご連絡ください。