男性の子育て参加がなかなか進まない。男性が育児や家事にかける時間は海外と比べ短く、育児休業の取得率は1割にとどまる。育休取得を巡り職場の理解を得る壁はなお高く、休業中の収入減への不安も根強い。男女を問わず働きやすい社会の実現に向け、子育て支援を巡る参院選の論戦が注視されている。

「男性の育休取得率が低いのは社内の空気を読み合っているから」「育児・家事に参画するとマネジメント力も育まれる」

6月、部下の育児と仕事の両立を応援する管理職や経営者「イクボス」を増やそうと山梨県が開いた研修会。育休の効果や取得を促す方法を専門家が解説し、オンラインも含めた50人超の参加者からは「育休を取るメリットをどう伝えたらいいか」と質問も出た。

公務員の50代男性は「男性の育休取得は生産性の向上にも有効という解説は新鮮だった。職場全体へ浸透させたい」と話す。各自治体はこうした研修会を開き、管理職らへの啓発を急ぐ。背景には職場の理解が十分には広がっていない状況がある。

育休などを理由にした男性社員への嫌がらせは「パタニティーハラスメント(パタハラ)」と呼ばれる。厚生労働省が2020年10月に実施した調査では、過去5年間に育休などを利用しようとした男性500人のうち26.2%が「ハラスメントを受けた」と回答した。このうち5割超は「制度利用を妨げる上司の言動」という内容だった。

東京都内のIT(情報技術)関連企業に勤める男性会社員(35)は21年、長男の誕生に伴い育休の取得を上司に相談したところ「前例がない」「業務を引き継ぐ人がいない」と言われたという。男性は「育休が取りやすくなるよう国にはもっと旗を振ってほしい」と話す。

父親の取得促進を掲げ、父母双方が取得した場合の育休期間の延長を認めた改正育児・介護休業法の施行は10年。男性の取得率は少しずつ上昇しているものの、20年度で12.6%にとどまる。8割を超える女性の取得率との差はなお大きい。

同法はさらに改正され、4月から従業員への制度周知が企業に義務付けられた。10月には子の出生後8週間以内に4週間まで育休を分割取得できる父親専用の制度も新設される。厚労省担当者は「利用が広がるかは管理職の意識改革がカギになる」とみる。

職場の理解に加え、収入減を不安視する人も多い。人材大手のパーソルキャリア(東京・千代田)は21年、将来子どもを望む20~50代に育休取得での「心配なこと」を複数回答で尋ねた。男女とも「収入が減るかもしれない」が4割を超え最多だった。

育休中は、状況に応じて給与の50~67%に相当する育児休業給付金を雇用保険から受け取れる。同社担当者は「住宅ローンの支払いなどがある場合は不安が消えない」と分析する。

男性の育休取得率100%の企業でも課題が見えてきた。育休取得に奨励金を出している中部地方の精密部品会社では近年、子が産まれた男性社員は全員育休を取った。制度上は最長2年間休めるが、これまで最も長く休んだケースでも10日間だった。

社員の間には「職場は休みやすい雰囲気だが長期間離れた例がない。復帰できるか不安」という声が根強いという。男性社長は「長く休んでも仕事に戻りやすいように技能を磨き直す機会を増やしていきたい」と話す。

今回の参院選では、男性の育休取得を含めて子育てと仕事の両立を支援する政策を示す政党が多く、演説で時間を割く候補者もいる。

NPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事は「誰もが働きやすい環境整備に向け、男性の育休推進は重要な取り組みだ。少子化を食い止め、生産性を上げる『好循環』にもつながる」と指摘する。参院選での論戦を通じ「収入減などを国の支援で補える制度の充実を期待したい」と話した。

                                         

男性の育児休業取得率を上げるためには、3つの壁をクリアする必要があります。

1つ目は、職場上司の理解、2つ目は育児休業中の収入の確保、3つ目は育児復帰後のキャリアを支援です。

これまで仕事一筋で頑張ってきた上司の中には男性の育児休業を理解し難いという価値観の人が多いのが現状です。こうした人達に研修や社内広報等を通じて男性も育児にかかわることの重要性を理解させることが必要です。2つ目の壁を打ち破るには、育児休業給付金に加えて企業がどれだけ支援できるかに掛かってきます。大企業では既に育児休業中は、一部有給扱いにする動きが出てきました。中小企業の場合には、これからの国の支援が不可欠になります。3つ目の壁の対策には、育児休業に入る前に面談を実施することが重要です。その上で育児休業を安心して取得できるように代替え要員を確保することが求められます。加えて、育児休業中の情報の提供や復帰後にスムーズに職場に戻れるようにキャリア支援をすることで従業員は、育児に専念することが可能になります。

国は、本気で出生率を上げたいと思うのなら選挙期間中のみ子育て支援を叫ぶのではなく、具体的に効果的な子育て支援策を実行していくべきです。

今日は参議院議員選挙の投票日です。私たちも国の政策を見極めるために、積極的に当事者意識を持って選挙に行く必要があります。近年、若い人の政治離れや投票率の低さが指摘されています。自分たちの1人1人の投票行動によって将来の国の行く末が決まり、自分たちの生活が影響を受けるということを自覚するべきです。出生率向上のためには本気で取り組む姿勢の見極めも選挙の際の選択肢として考えてほしいものです。

 

育児休業制度のご相談は、福岡県久留米市まつもと経営労務officeまでご連絡ください。