働きやすさのジェンダー格差が根強く残っている。日本は仕事を持つ女性の比率が結婚・出産期に落ち込む「M字カーブ」がなだらかになる陰で、労働時間は二極化したままだ。女性はフルタイムと短時間の2つの山による「もう一つのM字カーブ」が浮き出る。性別によらず能力を発揮できる環境を整えなければ人口減少による成長力の低下に拍車がかかりかねない。

働く女性は増えている。総務省の労働力調査によると、就業者と職探し中の人を合わせた労働力人口の割合(労働参加率)は1990年に30~34歳で52%だった。2020年には78%に高まった。

性別による差がなくなったわけではない。労働時間の分布からは、なお残る社会のひずみが見て取れる。20年に男女ともに最も多い就業時間は週40~48時間だった。男性で46%、女性で32%を占める。次いで多いのは男性が49~59時間(14%)なのに対し、女性は15~29時間(26%)に1~14時間(14%)が続く。

週5日勤務で計算すると、男性は1日8時間以上働く人が就業者の7割を占める。女性は4割にとどまる。女性は非正規雇用が多いことが背景にある。

厚生労働省の調査で、女性が正社員以外で働く理由として最も多かった回答は「家庭の事情と両立しやすい」(41%)だった。10年に子供が生まれた世帯を追跡すると母親の常勤比率は出産を挟んで38%から25%に下がった。この数字は10年たっても3ポイントしか戻らなかった。逆にパート・アルバイトの比率は産前の19%から42%に拡大した。

「日本は正社員で働く負担があまりに重い」と日本女子大学の大沢真知子名誉教授は指摘する。日常的に残業があり、定時で帰れることは少ない。キャリアパスとして定着してきた国内外の転勤は家庭生活との両立が難しい。そのしわ寄せが女性に偏る。「家事、育児は女性が担う」という古い役割意識も残る。

国際労働機関(ILO)によると、週平均の労働時間の性差は主要7カ国(G7)で日本が最も大きく、10時間を超える。米国やフランスは5時間ほどだ。

慶応大学の山本勲教授らが10~15年の上場企業のデータを調べたところ、女性の管理職登用率が0.1ポイント上がると総資産利益率(ROA)が約0.5%、生産性が13%高まる関係がみられた。登用率が15%を上回ると企業業績が明確に向上する傾向もあった。「昇進の可能性が開かれることでモチベーション向上を通じ生産性が高まっているようだ」と分析する。

 

 

日本の少子高齢化の問題と女性の労働参加率は、密接な相関関係があります。以前からこの「M字型カーブ」については指摘されており、欧米のように台形に近づいてきているとはいえ、まだまだ問題があることが分かります。国もこれを放置しているわけではなく、働き方改革を促したり、育児休業法を改正したり、さまざまな助成金を準備したりすることで子育てのし易い職場環境づくりを促しています。

出産を支援する環境を整えたうえで、男性女性問わず子育てに参加できる職場を作ることは現代の経営者にとっては責務となっています。人口が減り続けることによる経済損失は計り知れないものがあります。日本の人口減少を他人事と思わずに自分の問題として真摯捉えることが求められます。

 

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