厚生労働省は会社を辞めて起業した場合、失業手当を受給する権利を最大3年間保留できるようにする。現在の受給可能期間は離職後1年間だけで、その間に起業すると全額を受け取れない課題があった。終身雇用の慣行に沿った制度を一部見直すことで安全網を広げ、多様な働き方を後押しする。経済を活性化するスタートアップが生まれやすい環境を整える。

労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会が近くまとめる雇用保険制度改正の報告書に盛り込む。厚労省は17日召集予定の通常国会に雇用保険法などの改正案を出す。

雇用保険に一定期間加入した人は、離職の翌日から1年間は求職活動中に失業手当を受け取れる権利がある。その間に起業したもののうまくいかなかった場合、受給可能期間が経過し、権利を失う例が多かった。

そこで1年間に加え、手当を受け取る権利を3年間保留できる特例を設ける。起業した会社の廃業後に就職活動に取り組むことを条件に日額上限で約8300円を支給する。権利を持ち越すだけで受給額などは変わらない。妊娠や出産などで求職活動ができない場合に同様の特例があり、それに沿った制度にする。

厚労省によると、海外ではドイツやスウェーデンなどで起業者やフリーランスらが任意で失業保険に加入できる例がある。日本の労働法制は原則、企業に雇われる労働者を前提に制度設計されている。

 

日本の開業率は、欧米諸国と比べるとかなり低い水準にあるといわれています。その理由の一つとして企業が失敗した際のセーフティネットが整備されていないことが挙げられます。中小企業白書によれば、開業率とGDPとの間には正の相関関係がみられ、開業率が高く、起業者がより多くなるほどGDPや経済に良い影響があることが分かっています。英国では、2010年から開業率の上昇が続いていますが、この背景には、英国政府による包括的な中小企業向け支援施策の充実があります。今回、手当を受け取る権利を3年間保留できる特例を設けることは、起業支援策の一つとして評価できます。起業を目指す人はこうした支援策を把握する必要があります。

 

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