田村憲久厚生労働相は10日の記者会見で、次の公的年金改革に向けて、基礎年金の水準低下を抑えるための新たな仕組みを検討すると述べた。人口減少や寿命の延びにあわせて給付額を抑制する「マクロ経済スライド」について、基礎年金と厚生年金の給付の抑制期間が同じになるようにする。
現在は基礎年金の方が給付抑制期間が長く、水準低下を懸念する声が出ていた。田村氏は「所得の低い方々に手厚い年金に変わる。非常に意味のある改革になる」と語った。年金改革は5年に1度の財政検証をもとに制度改革を実施する。次回の2024年の検証に向け検討する。
厚労省が昨年末に示した試算によると、19年度に36.4%だった基礎年金の所得代替率は、現行制度のもとではマクロスライド終了後の46年度に26.5%まで低下する。厚生年金とスライド実施期間をそろえると、33年度の32.9%に低下を抑えることができるとしていた。
公的年金の受給開始年齢は原則65歳で、本人が希望すれば60~70歳の間で繰り上げたり、繰り下げたりできますが、2022年4月からは受給開始年齢を繰り下げられる上限が70歳から75歳に引き上げられます。
受給開始時期を1カ月繰り下げると、65歳開始に比べて年金の受取額は0.7%ずつ増額されます。70歳では42%増、75歳は84%増える。65歳以降も働いて厚生年金の保険料を払い続ければ、年金額はさらに上乗せされます。
公的年金を受給する高齢者世帯の約半分は年金以外の収入源を持っていません。働きたいシニア世代の就労を後押しすることは本人の老後の生活を維持することにつながり、保険料の払い手を増やすことにもなって年金財政にも貢献することになります。そのためにも70歳定年時代に適した雇用制度を再構築する必要があります。