「雇い止め」とは、期間の定めのある労働契約について更新を繰り返した後に、最後は期間が満了したことを理由に労働契約を終了させることです。
「解雇」とは、期間の定めのない労働契約について企業側から一方的に解約することです。このように、雇止めと解雇では意味合いが大きく異なります。
なお、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の場合にも、その期間中に企業側から一方的に解約することは、解雇にあたります。解雇は正規採用の従業員が主体となる問題です。これに対して、雇い止めについては、期間を決めて雇用されることが多い臨時従業員、派遣従業員などが主体となる問題です。
雇い止めは、有期の労働契約期間が終わったことによる労働契約の終了ですから、契約した期間が終わったため職を失うのは当然のはずです。それがなぜトラブルになるでしょうか。
実務上は、臨時従業員であっても、戦力として正社員同様に業務を遂行している場合も多いのですが、その際には、有期労働契約の更新を繰り返すことになります。
有力な戦力であれば、有期契約を更新するのは当然です。従業員自身も自分が貴重な戦力であることを自覚しているはずです。そうであれば、これまで契約更新を繰り返していることで、次回の契約更新の期待は高まります。これまで契約更新が繰り返されているのは、正社員と同様以上の業務実績があることの証明ともいえます。それにもかかわらず実績を無視して、雇用契約期間が満了したからといって直ちに契約を切ることは、従業員側の合理的な期待に反することにもなります。そして、これがトラブルにも繋がります。従業員からすれば、契約更新を期待していたところに契約が打ち切られるのだから雇用者の裏切り行為ともとれます。
有期労働契約であっても、期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態になっている場合や反復更新されてきた経緯等を踏まえると、雇用継続への合理的期待が認められる場合には、解雇と同様の慎重な手続きを踏むべきです。
裁判例においても、正社員と同様な就業状況にあったかどうかが判断基準になっています。
厚生労働省は、トラブルを予防するための基準を策定しています。この基準どおりの措置をとったとしても完全にトラブルを回避できるわけではありませんが、雇用者側にとっては参考になる基準です。内容は以下の通りです。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の主な内容(厚生労働省)
使用者は、有期労働契約の締結に際し、更新の有無や更新の判断基準を明示しなければなりません。 有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも30日前までに予告をしなければなりません。 雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときには、遅滞なく証明書を交付しなければなりません。 有期労働契約が1回以上更新され、かつ、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、有期労働契約を更新しようとする場合には、契約の実態及び労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。 |
労務管理についてのご相談は、福岡県久留米市まつもと経営労務Officeまでお問い合わせください。