経営労務Q&A (2021.9)

人材確保等促進税制とはどのようなものですか。

 

新たな人材の確保及び人材育成の強化を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにする観点から創設された制度です。以前は、賃上げ税制と呼ばれていました。新規雇用者に対する給与を一定割合以上増加させた企業に対して、新規雇用者給与等支給額の一定割合を税額控除できる措置を講ずるとともに、事業変革に向けた人材投資(教育訓練費)を増加させた企業に対しては、税額控除率を上乗せします。

 

適用要件

青色申告書を提出する法人が、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において、新規雇用者給与等支給額の新規雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2%以上であるときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の15%の税額控除ができます。

この場合に、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の20%の税額控除ができます。

ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とします(所得税についても同様)

 

適用に当たって

1.「新規雇用者給与等支給額」と「控除対象新規雇用者給与等支給額」で用いる給与等の範囲が異なります。

人材確保等促進税制の適用要件等は、上記のとおりです。「新規雇用者給与等支給額」(法人が1年以内に雇用した一般被保険者への給与等)の対前年比2%以上の増加が適用要件になっています。正社員、パート、アルバイトへの給与等も含めて、適用要件の判定を行うことになります。

この制度の税額控除限度額は、「控除対象新規雇用者給与等支給額」をベースに計算します。「控除対象新規雇用者給与等支給額」は、法人が1年以内に雇用した国内雇用者で、労働者名簿に記載された者への給与等であるため、一般被保険者への給与等に限定される「新規雇用者給与等支給額」よりも広い定義となっています。

例えば、新たに雇用した「高年齢被保険者(65歳以上の一定の雇用者)」等への給料等は、適用要件における「新規雇用者給与等支給額」には含めない一方で、税額控除限度額における「控除対象新規雇用者給与等支給額」には含めることになります。

 

2.適用要件の判定時には、給与等の支給額から雇用調整助成金等を控除しません。

3.税額控除限度額の計算時には、給与等の支給額から雇用調整助成金等を控除します。

4.所得拡大促進税制との併用はできません。

 

青色申告書を提出する全企業向けの所得拡大促進税制の見直は、事務負担の軽減、適用要件の緩和により、適用できる企業も増え、企業の人材確保にも役立ちます。

労務管理と人事管理の違いについて

Q 労務管理と人事管理はどう違うのですか

A 労務管理とは、従業員の「労働条件」や「労働環境」「福利厚生」などを管理する業務のことです。労務管理の具体的な業務には、勤怠管理や給与計算、入退社に伴う社会保険の手続きなどがあります。労務管理の目的は「従業員一人一人が安心して働くことのできる職場」をつくることといえます。企業規模の大小を問わず、全ての企業に労務管理は不可欠なものです。具体的には、労働時間管理、給与・福利厚生計算業務、安全衛生管理、従業員のライフイベントに生じる必要な諸手続きの管理、労使関係管理(労働組合との折衝等)が挙げられます。

人事管理とは、企業内で人材をより効果的に活用するために、規則や処遇を定めて適切に運用することです。人事管理では、従業員と直接かかわる業務を行います。人事管理の具体的な業務には、採用活動、社内研修の実施、人事評価制度の作成、配属先の決定などがあります。本来、労務と人事は異なる仕事と役割を持っています。しかし、多くの中小企業では人事担当者が労務や総務の仕事を兼任しています。人事担当者は人材育成や社内研修の実施、評価制度の立案などの業務を行うべきですが、企業規模によっては間接部門に人手を割けないのが実情です。そのため、人事と労務の業務の線引きがあいまいになっています。

 

コロナ禍の影響で「テレワーク」が導入され在宅で勤務することが一挙に普及しましたが、この場合には、従業員の仕事振りを直接見ることができません。そこで、まず企業内のルールを整備する必要があります。基本的には「就業規則の変更」あるいは「在宅勤務規定の策定」といった対応が求められます。テレワークに伴う問題として「交通費や諸手当の支給をどうするのか」「PCなどの機器の光熱費や通信費の負担をどうするのか」「情報管理のペーパーレス化」といったことも併せて検討しなければなりません。適切な給与支給のためには「出退勤メール」や「Web勤怠管理システム」のような制度を導入して、正確な労働時間を把握することも不可欠です。

 

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