週休3日制とは

週休3日制とは、読んで字の如く、現状では多く企業が採用している週休2日制から、休みの日を1日増やして1週間あたりの休みを3日とする制度のことです。 現時点でYahoo! ジャパンやファーストリテイリング、みずほフィナンシャルグループなどで採用されていますが、多様な働き方が可能な制度と考えられています。

最近、週休3日制の導入論を目にすることが増えました。週単位での業務処理で考えると、週休3日制では1週間あたりの休日を1日増やすことになるわけですが、この場合には、これまで週5日で処理していた仕事を週4日で済ませる必要が生じます。

本年4月5日には加藤勝信官房長官が「選択的週休3日制」の導入について検討する旨の考えを示しました。ここでいう選択的とは、本人の希望によって週休3日で働くことが可能になることを意味しています。

その後、6月18日に発表された骨太方針2021において選択的週休3日制の推進が盛り込まれました。ワークライフバランスが重視されるようになり、育児や介護、自分らしい生き方と仕事を両立させるために多様な働き方が選択できる必要性が高まっています。週休3日制によって多様な働き方が可能になるとされ、現実に導入する企業も出始めました。

なぜ週休3日制の導入が促されるのでしょうか? また、週休3日制を採ることでどのような効果が生まれるのでしょうか?

週休3日制のパターン

企業が採用する週休3日制のパターンとして具体的には、1日10時間労働で週4日勤務(変形労働時間制)、1日8時間労働で週4日勤務して給与水準低下、1日8時間労働で週4日勤務して給与水準維持、が挙げられます。

1日10時間労働で週4日勤務するパターンでは、通常、週休3日制・週4日勤務を選択した場合であっても、週休2日制・週5日勤務の場合と1週間あたりの労働時間は同じになります。この場合、週40時間労働を週休2日制のように5日で割って1日当たり8時間にするのではなく、4日で割るので1日あたりの労働時間が10時間になるわけです。

労働基準法では、1日の法定労働時間は8時間となっているため、この場合、毎日2時間分の時間外労働が発生してしまいます。そこでこれに対応するために週休3日制を導入するときには、月単位の「変形労働時間制」を採用することになります。

変形労働時間制では、一定の期間を単位とし、その期間内ならば1日8時間を超えて労働しても、残業代を支払わないことが可能です。労働基準法では、企業が変形労働時間制を採用する場合には、1ヶ月以内の一定期間を週当たり平均で40時間を超えないようにすることが定められていますが、週4日働いて1日の労働時間を10時間とするのであれば、この条件をクリアします。

1日8時間労働で週4日勤務するパターンでは、1日の労働時間を8時間のまま週4日働くこともありえます。そうすると、1週間の労働時間が8時間分減ってしまい32時間となるため、それに合わせて給与水準が下がることになってしまいます。1日8時間労働で週休3日になると、週休2日制より給与が下がるはずです。ただし、この場合であっても成果主義の考え方を採る企業の場合には、必ずしも給与水準が下がるとは限りません。

週休3日制のメリット・デメリット

新たな働き方として注目される週休3日制ですが、企業・従業員のいずれにもメリットがある反面、デメリットも存在します。

週休3日制を導入する企業側のメリットは、「週3日休める」というアナウンスメント効果によって従業員自身の個人生活の充実を印象付けることで、優秀な人材の確保を促す点が挙げられます。また、そうした会社であれば、労働条件・環境に不満を持つ従業員が減少することで、結果として定着率を高める効果が期待できます。

さらに、休みが増えることで、仕事の緊張を緩和してリフレッシュし、就業中の集中力を回復することも考えられます。あるいは、休日を有意義に使うことができれば、従業員のスキルアップに繋がることにもなります。

デメリットとしては、従業員がまったく就業しない日が発生するために、内部での連携性に支障が生じることで、週休2日制なら終わっていたはずの業務が終了しないといったケースが起こることがありえます。また、週休3日となると従業員が取引先と連絡の取れる日が減ってしまい、これまでと比べるとスムーズな引継ぎが難しくなることもありえます。

週休3日制の導入による従業員のメリットとしては、やはりプライベートの時間を増やせるという点にあります。気分転換をしてプレッシャーから解放されることにもなるので、心機一転仕事に対する意欲を高めることもできます。また、通勤時の混雑・渋滞ストレスから解放される日が増えるという点も、企業人にとっては大きなメリットといえます。

デメリットとしては、労働時間が減ることで、収入が減少するケースがあるということが挙げられます。企業が定めた労働・報酬制度次第で給与水準がどうなるかは変わってきますが、減額されてしまう場合のダメージは甚大です。1日10時間で週4日勤務パターンの場合には、勤務日の労働時間が増えることで、著しい疲労に襲われることもあるでしょう。休みが増える一方で、就業日における自由時間の確保は難しくなります。

このように週休3日制にはさまざまなメリット、デメリットがあります。企業側としても労働者側としても自らのニーズに照らしてその導入および選択をすることでさらなる向上に結び付くことになりますが、そのメリットとデメリットをしっかりと把握したうえで熟慮して決定する必要があります。適切な導入であれば、雇用者にとっても労働者にとっても大いに寄与する制度になります。

久留米大学法学部教授  松本 博

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